精油を「いい香りのもの」だと思っているなら、ちょっともったいない使い方をしているかもしれません。
香りが気分を変えるのは、気のせいでも感覚論でもありません。

これは脳の構造の話です。視覚や聴覚の情報は、脳内の中継地点「視床」を通ってから処理されます。ところが嗅覚だけは、その中継をすっ飛ばして、感情や本能をつかさどる大脳辺縁系へ直接届きます。他の五感にはできない経路を、香りだけが持っているんです。
しかもその信号は、体温・睡眠・ホルモン・免疫を調整している視床下部にまで届きます。リラックスしたくてアロマを焚いていたら、体の内側の調整機能にまで働きかけていた——そういうことが実際に起きています。
気分転換のつもりで使うだけでも十分楽しいけれど、仕組みを知ってから使うのと知らずに使うのでは、選び方がまるで変わってきますよ。
昔嗅いだ香りで、記憶がふいによみがえる経験って誰にでもありますよね。あれは偶然ではありません。
記憶を保存する「海馬」と感情反応を担う「扁桃体」は脳の中で隣同士にあって、香りの刺激はその両方に同時に届きます。「プルースト効果」と呼ばれるこの現象は、香りが記憶に与える影響が他の感覚とは次元が違うことを示しています。
目次
仕事や勉強に使うなら、まずこの3つを知っておくと選びやすくなる
ローズマリーが「記憶のハーブ」と呼ばれるのには、ちゃんと根拠があります。
英国ノーサンブリア大学の研究で、ローズマリーの香りを嗅いだグループは記憶テストのスコアが有意に上がりました。
主成分の「1,8-シネオール」が、記憶と学習に関わる神経伝達物質の分解を抑える働きをするとされています。試験前やデスクワーク開始前の香りづけとして、理にかなった選択です。ケモタイプによって使用制限が異なるので、迷ったらCTシネオールを選ぶと扱いやすいですよ。
ペパーミントは、午後の中だるみした頭をはっきりさせてくれます。メントールの清涼感が眠気をすっきり吹き飛ばしてくれる感覚は、一度使えばすぐわかります。
オレンジスイートは、日本アロマ環境協会の研究で前頭前野の血流増加が確認されている精油です。香り立ちが早くて気分を素早く切り替えやすいので、初心者の最初の1本としてもおすすめしやすいです。
精油は「いつ使うか」で、選ぶ香りを変えるのがポイント
朝はローズマリー、レモン、グレープフルーツ、ペパーミントで頭のスイッチを入れます。
午後の集中タイムには、柑橘とミントのブレンドが向いています。プチグレンやベルガモットとミント系を組み合わせた実験では、平均で1.3倍、女性では最大1.6倍の生産性向上が確認されているというデータもあります。
夜は逆方向へ切り替えます。ラベンダー、フランキンセンス、ゼラニウムあたりの、揮発がゆっくりなベースノートを中心に選んでみてください。寝室に入った瞬間からじんわりと香りが広がっている状態を作っておくだけで、体が自然と緩みはじめます。就寝前にディフューザーをタイマーセットしておくのが、一番無理なく続けられる方法です。
ディフューザーは、使う空間に合わせて選べば大丈夫
静かな書斎や寝室には超音波式がよく合います。水に数滴垂らすだけで動いて、2,000円台から手に入るものも多く、デザインのバリエーションも豊富なので選ぶ楽しさもあります。
広いリビングにはネブライザー式が向いています。水なしで原液をそのまま拡散させるので、香りが薄まらず変質もしにくいのが特長です。
道具がないときはコットン1枚で代用できます。デスクに1枚置いておくだけで、その日の気分転換になりますよ。
ブレンドに慣れてきたら、組み合わせをぜひ試してみて
集中・仕事用ならローズマリー3:レモン2:ペパーミント1
夜のリラックスにはラベンダー3:フランキンセンス1:ベルガモット2
が最初のブレンドにはおすすめです。
香りの強いものは少量に、弱いものを多めに合わせるとバランスが整います。
作ってすぐより1~2週間ほど置いてから使うと、香りが馴染んでぐっと一体感が出てきます。
使いはじめる前に、安全面だけはしっかり押さえて
精油は植物成分を高濃度に凝縮したものなので、原液を直接肌につけるのはNGとされています。
妊娠中・授乳中・乳幼児がいる場合は使えない種類もありますので使用前に精油それぞれ確認をしましょう。
密閉した狭い空間での長時間・大量使用は避けてください。
購入前に各精油の注意事項を確認しておくと安心です。
種類が多くて選び方に迷ったときは、アロマテラピーアドバイザーやインストラクターの有資格者に相談してみるのがおすすめです。日本アロマ環境協会(AEAJ)認定の資格講座で体系的に学ぶ方法もあります。
自分に合った使い方を見つけるまでの時間を、ぐっと短縮できますよ。